かぼちゃのトレイル日和

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【読書感想文】喪失感 悲しみとの向き合い方 母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。

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どうもかぼちゃです。

今回の読書感想文は個人的にあまり馴染みなかったエッセイ漫画です。

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【目次】

 

 

 

本書のことを書く前に 

介護の仕事に携わり 間もなくかぼちゃは10年になります。

施設の介護福祉士という職業は 終末期を迎え亡くなる方を見送ることが非常に多いです。

かぼちゃも特別養護老人ホームで働く介護福祉士として多くの施設利用者である高齢者の死とその家族の姿を目の当たりにしてきました。

 

季節の変わり目や 急激に気温の下がるこの11月~12月からの年を跨ぐか否かの時期は高齢者の方の体調の急変が多く 旅立たれる方が比較的多い傾向にあります。

 

特に夜勤時は人員が少ない時間帯なので(基本夜間帯は一人で担当部署を巡回する)医師や看護師 家族 生活相談員 施設責任者等々への連絡であったりして バタバタと忙しくなることや 

自分の夜勤の時に見送るのを暗く重く感じる人も多いので この時期の夜勤業務前は思わず暗い感情を漏らしてしまう職員が多いです。

 

かぼちゃはというと もう10年もするとそれも割り切れるようになりました。 

多くの最後を看取る経験をすると 冷静に淡々と業務としてこなしている自分を考えた時にどこか人間として大切な感情が欠落してしまったのか?と不安な想いに駆られた時期もあったのですが 専門職たるもの常に冷静であれなので 決して悪いことではないと考えています。

かと言って やはり自分の親類や近しい人の死に対しては自分の中に悲しい感情がしっかり込み上がってきて 涙も流れますし ぽっかりと心に穴が開いたような喪失感はなかなか埋めようもないです。

 

本書を読み終えた時にふとかぼちゃ本人のことと共に 介護福祉士として向き合った残された家族のことが頭をよぎりました。

 

今までで施設で亡くなった方と対面した時のご家族の様子は様々ですが 自分たち施設の

介護福祉士が付き添えるのはそこまでで 当の家族にはその先 つまりその後の生活があるということを考えました。

 

【母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。】

本書の感想

ストレートなタイトル表現な本書に出会ったのは図書館でした。

 

ある種 目を引くこのタイトルの本書は物語の主人公である著者宮川サトシ氏が描く実話を基にした16話からなるエッセイ漫画。

 

真っ直ぐなタイトルと同じく 画風もストレートで見やすく 200ページ未満と比較的 短時間で読み終えてしまう長さですが 親との死別という遅かれ早かれ誰もがいつかは体験する内容で その心情の起伏や移り変わりが シンプルな絵柄と相まってなんともリアルで心にいつまでも残る一冊です。

 

登場人物

 主人公 学習塾で働きながら漫画家を目指している。33歳。

 

 末期の胃がんを告知され闘病生活を送る主人公の母

  明るく誰からも愛される。

 

真理 主人公の交際相手。母と仲が良い。

 

 妻を深く愛している厳格な人物。

 

 クールだが家族大切にするしっかり者。

 

 

あらすじ

 

本書の著者であり 主人公である「僕」は

末期がんの告知を受け闘病の末亡くなった「母」の葬儀の日

火葬の後に母の遺骨を前にした時 ある想いがよぎります。

 

「母の骨が欲しい むしろ食べたい

「母を身体の一部にしたい」

 

その日から「僕」には「母」のいない日常が始まります。

 

しかし いたるところにある生きていた「母」の痕跡は 嫌でも母との別れの記憶を呼び起こします。

 

母が使っていた携帯電話 母が書いた文字 子供のころ母と過ごした景色

 

何気ない日々の思い出が掛け替えのない幸せの毎日であったということに気づく「僕」。

 

大きな喪失感と共に 「母」がいないこの世界で生きる意味とは何だろう。そんな自問自答の繰り返す日々。

 

「母」がいなくなったことで実家にはゴミが溜まり 庭には雑草が生え いたるところに汚れが目立ち始め 母の葬儀の時も毅然として厳格だった父は酒の量が増え荒れていきます。

 

「母」がいなくなったことで父も家も崩れていくような…。

 

自分だけでなく周囲の人々もまた深い悲しみと喪失感を抱いている。

 

そんなある日 兄と「母」の墓石を買いに出かけた時に交わした会話から

兄は兄のやり方で悲しみと向き合い それでも前を向いて進み出している事をしります。

そして兄が掛けてくれた言葉をきっかけに 「僕」は東京に行くことを決意。

 

そして「母」が亡くなって1年 ある事が「転機」となり 物語は終盤へ

 

「母」の死は「僕」の人生になにをもたらすのでしょう。

 

というざっくりとですが あらすじとなってます。

 

最後に

 

大切な人 身近な人の死 

 

故人の「死」に意味を持たせることが出来るのは今を生きる人間だけでしかできなくて

悲しむこと 想うこと それは決して無意味なことじゃなく その時間がいつか残された人の前に進む力になったり糧になる。

本書を読んで強く感じたことです。

 

介護福祉士としていうと

介護の仕事をしていて 施設で亡くなる方をたくさん看取ってきました。

自分が働く特別養護老人ホームでは長年暮らしていた利用者の方が病院の様に元気になって退院するということはなくて 生活の場として施設で最後を迎える人がほとんどです。

時にこの仕事の先は「死」が付き纏う事 と考えると 虚しさを感じてしまうこともあります。

でも 綺麗ごとじゃなく 不思議と自分の看取った方の表情だったりその日の出来事は何年経っても覚えていたりします。

その都度その都度 たくさんを感じ たくさん学びました。

自分の中に今も活きています。

 

 

 

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