かぼちゃのトレイル日和

トレイルランを中心に 走ること 読むことについて綴っていくブログ

【読書感想文】「何かを得るためには 何かを失う」世界から猫が消えたなら

スポンサーリンク

どうもかぼちゃです。

 

めっきり涼しいと思っていたら今日は午前から気温は25℃以上。 

汗だくで20㎞程のランニングを走り終え意気揚々と帰宅したのですが 最後に立ち寄った公園にランニング用のウォークマンを置き忘れたことに気付き 慌てて引き返すも既にそれはありませんでした。

公園の管理事務所に問い合わせるも届け出はなし。

 

「ええ~ショック」

持ち去られた後だった~

 

新調して半年も経っていなかったのでショックを隠し切れません。

思わず独り 声が洩れました。

 

まあ置き忘れたかぼちゃの自業自得ですが…

 

そんなこんなで(どんなだ)

今日紹介するのは

川村元気さん 「世界から猫が消えたなら」

 

「何かを得るためには 何かを失う」というテーマの本書。

冒頭のかぼちゃのウォークマンの話が消し飛ぶ程の感涙必至の名作です。

 

「何かを得るためには 何かを失う」世界から猫が消えたなら


f:id:kabocha-8:20201119173607j:image

 

登場人物

 30歳の郵便配達員。脳腫瘍で余命僅かであると宣言され 悪魔との取引で寿命を伸ばす。映画オタク。

悪魔 僕と姿がそっくりな悪魔。やたら陽気で軽い。通称アロハ。

「僕」の余命を伸ばす代わりに世の中のモノを一つ消すという取引を持ち掛ける

キャベツ 同居している猫。キャベツという名前は母がつけた。物語の終盤喋り出すがなぜか時代劇のサムライの様な口調。

彼女 映画館で働いている大学時代の元恋人。

ツタヤ 「僕」の親友で信頼を置く映画オタク。ツタヤという呼び名はレンタルビデオ店で働いている(ちなみにTSUTAYAではない)に由来

 4年前に他界。以前レタスという猫を飼っていた。ある日キャベツを拾ってくる。

 小さな時計屋を営んでいる時計職人。ある出来事をきっかけに四年以上「僕」と会っていない。

 

あらすじ

郵便配達員として働く三十歳の僕。

ちょっと映画オタク。

猫とふたり暮らし。

そんな僕がある日突然 脳腫瘍で余命わずかであることを宣告される。

絶望的な気分で家に帰ってくると 自分とまったく同じ姿をした男が待っていた。

その男は自分が悪魔だと言い 

「この世界から何かを消す。その代わりにあなたは一日だけ命を得る」

という奇妙な取引を持ち掛けてきた。

僕は生きる為に 消すことを決めた。

電話 映画 時計…。

僕の命と引き換えに 世界からモノが消えていく。

僕と猫と陽気な悪魔の七日間が始まった。

 

小学館文庫 あらすじより抜粋

 

 

あらすじの通り

「僕」は自分の命と引き換えに この世のモノを一つまた一つと消していくという 文字通り悪魔と取引をします。

物語は始まりである「僕」が余命宣告を受け悪魔(アロハ)が現れた月曜日から

終章の日曜日までの七日間の物語です。

 

以下ネタバレ含みます。

月曜日 悪魔がやってきた

兼ねてからの体調不良で悩んでいた「僕」は病院で脳腫瘍で余命いくばくもないことを告げられます。一週間か長くても一年の命。

 

失意と共に家に帰るとそこには自分とそっくりな悪魔アロハが現れ取引を持ち掛けます。それは一日だけ寿命を延ばす代わりに悪魔アロハが選んだこの世の中のモノを一つ消す というものでした。

 

少しでも長く生きたいと思う「僕」は最初に電話を消しアロハの提案を受けます。

がアロハはこの世界からモノを消す前に オプションと称して最後に一回だけ消すモノを使える。という提案をします。

 

悩んだ「僕」は最後の電話の相手としてある人を選びます。それは大学時代の元恋人でした。

再会の約束を漕ぎつけ 電話を切ると世界から電話が消えます。

 

火曜日 世界から電話が消えたなら

電話が消えた世界で これまで自分がどれほど携帯電話に依存し支配されていたことを痛感する「僕」。

しかし 待ち合わせ時間になっても現れない「彼女」に連絡を取ろうとし 電話をこの世から消したことを思い出し 思わず「不便だ」とこぼしてしまいます。

大学時代 「彼女」が携帯電話を持っていなかった為に 同じく不便な思いをした記憶。電話にまつわるたくさんの思い出が頭をよぎります。

どうにか「彼女」との再会を果たし「僕」。余命宣告を受けた事を話すも 彼女は驚く程素っ気ない。しかし 変わらない「彼女」がそこにいました。

別れ際 「彼女」がある提案をします。

自身の勤める映画館で「僕」の見たい映画を一つ上映してくれるというのです。

 

水曜日 世界から映画が消えたなら

朝 アロハが再び「僕」の前に現れます。

次に消すのは映画だと告げに。

映画オタクで映画が大好きな「僕」は悩みます。

散々迷った後 「僕」は映画をこの世から消す決意をします。

「僕」は映画が消える前に最後に一つ「彼女」の映画館で観る最後の映画を探すことにします。

訪ねたのは親友で同じく映画オタクである通称「ツタヤ」でした。

様々な映画を提案してくれる「ツタヤ」。

多くの候補の中から「僕」が選んだのはチャップリンの「ライム・ライト」。

 

彼女の映画館で最後の映画を鑑賞しながら「僕」は自分の人生を映画になぞらえます。

例え小さくて地味でヒットしない映画だったとしてもエンドロールの後も誰かの心に残る人生でありたい。

「母」が生前言っていた。

「何かを得るためには 何かを失わなくてはね」

そして世界から映画が消えます。

「僕」は映画を消したことを激しく後悔します。

 

木曜日 世界から時計が消えたなら

映画を消えた日 アロハが次に消すと告げたのは「時計」でした。

映画を消した後悔から考えなくそれを承諾した「僕」。

朝目覚めると 世界から時計が消えていました。

小さな時計屋を営む父 数年前に仲違いし ずっと会っていない父の記憶が頭をよぎります。

しかしそれ以上に衝撃的なことが起こります。

飼い猫の「キャベツ」がしゃべりだしたのです。もちろんそれは悪魔アロハの仕業でした。

キャベツとの会話の中で自分がまったくキャベツのことを理解していなかったと気付く「僕」。

言葉が分かることは残酷だ。と嘆きます。

 

キャベツの要望で一緒に公園に散歩に出かける「僕」。

頭の中で亡くなった母の記憶が蘇ります。

母もまた生前によくキャベツを公園に散歩につれて行っていました。

愛猫であったレタスが死んだ時 ショックでひどく落ち込んでいた母。そんな時に拾ってきたのがキャベツでした。

母はレタスと同じようにキャベツを大切に育てていました。

しかし そのキャベツからショッキングな言葉を聞きます。

 

あんなにキャベツを愛し 大切に育てていた母の事を キャベツはまったく覚えていなかったのです。

どんなに問い詰めても母の事を「それは誰?」と言うキャベツ。

 

ショックを隠し切れない「僕」は家に帰ると古いアルバムを引っ張り出し キャベツに母との思い出について説明します。

母の事。母がキャベツに注いだ愛情。共に過ごした時間。母が生きた証。生きた時間。

 

その時 キャベツはある写真に「何かを感じる」と言い出します。

それは 死を間際にした母が医者や家族の反対を退け強く望んだ旅行。

 

父 母 僕 そしてキャベツとの三人と一匹との最後の家族旅行の写真です。

 

やはり何かは思い出せないが ただ「幸せだった」ことは覚えていると語るキャベツ。

その時 「僕」は母が最期に望んだのは家族での旅行ではなく 「僕」と「父」が旅行をきっかけに 仲良くなることだったと気付くのです。

数年越しに母の想いに気付く「僕」。

自然と涙が流れます。

 

そこに現れる悪魔アロハ。

不敵な笑みを浮かべ次にこの世界から消すモノを宣言します。

それは「猫」でした。

 

金曜日 世界から猫が消えたなら

世界から猫を消す。そういったアロハの言葉に「僕」は従うことが出来ませんでした。

一日だけ考える時間をくれるというアロハ。

目覚めるとキャベツがいません。

なぜ?まだアロハに返事はしてない。

駆けだす「僕」。

 

走りながら 母のことを思い出します。そして父のこと。

父との確執。父と「僕」がだめになった理由。

母が亡くなった あの日のこと。

 

みつからないキャベツ。

気が付くと「彼女」の映画館の前まで来ていました。

そこにキャベツはいました。そして「彼女」も。

 

「彼女」は一通の手紙を差し出します。

それは亡き母が最後に記した手紙。

母が「彼女」に「僕」が本当に悩み苦しんでいる時に渡してほしいと頼み 託した手紙でした。

 

そこには母から「僕」に向けた「あなたの素敵なところ10コ伝えます」と記されていました。

手紙を読みながら 母の言葉が思い出されます。

「何かを得るためには 何かを失わなくてはね」

 

「僕」はあることを決意します。

 

土曜日そして日曜日へ

大きな決断をした「僕」。

それをアロハに伝え ある一通の手紙を書き そして「僕」は走り出します。

物語の終盤へと向かって…。

 

 

感想

決して長い小説ではなくページ数も少ないので比較的短時間で読み上げることができます。

冒頭から悪魔のノリの軽さや あっけらかんとした彼女 突然喋り出す猫

余命宣告という重苦しいスタートから びっくりするぐらい明るいトーンでが進みます。

 

何かを得るために 何かを失う というテーマ 

人間が如何に自分たちが生み出した概念(電話や時計)に縛られある意味で不自由を自らに強いている。

しかしその不自由を強いる要素こそは人間がもとめる安定や安心であり不可欠なものであるということ。

そして家族 友人の そして恋人のそれぞれの深い「愛」について語られる本書。

 

公園でウォークマンを失くしたかぼちゃは妻に平謝りし 新しいウォークマンを懇願するでしょう。それで何を得るかわかりませんが

世界から猫が消えたなら

ぜひ皆さん読んでみて下さい。

 


 

ここまで読んで頂きありがとうございます。

スポンサーリンク