かぼちゃのトレイル日和

トレイルランを中心に 走ること 読むことについて綴っていくブログ

(後編)比叡山インターナショナルトレイル2023の記録

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20㎞地点 後半スタート

A2根本中堂エイドを出発する前に暑さを感じて何となくここからの区間で足が攣る予感がした。芍薬甘草湯を飲んで両足にザックに忍ばせていたマグネシウムオイルを塗った。エイド前に50mileのランナーをパスする場面があった。mileランナーは50km7時間半の関門クリアを目指してるはず。なのでここまでのペースは悪くないと思った。f:id:kabocha-8:20230518083842j:image

A2を出てからは比叡山延暦寺の境内。釈迦堂を抜けて走りやすいエリア。途中青龍寺というお寺の直前の下りは角度が急で足に来た。スピードを落とそうとしたけど石段の衝撃はズシズシと足に響く感じがあった。青龍寺を超えてはテクニカルな長い下りを下っていく。頭の中はここを下り切ったら比叡山の山場 横高山の登りのことで頭がいっぱいだった。

長い長い下り坂を下って横高山の登りが始まる。登り始める前に長い登りに備えてANDO(餡このジェル)とマグオンをお腹に落とし込んだ。

このレースの山場である横高山は我慢の区間。ほとんど歩くしかないけどかといって途中でゼーハーゼーハー立ち止まっていたらズルズル遅くなってしまう。「走れなくても決して止まらずゆっくりでも進み続ける」と自分に言い聞かせて登り始めた。案の定勾配キツいところや足元が悪くなかなか走るどころではなかった。しかもA2からの下り坂でダメージをもらってしまったのか足が重たい。

それでもゆっくり歩きで止まらずに一定リズムで登って行くと前を進むランナーを1人2人…とパスして行けた。

13:00頃 スタートから約4時間 25kmの距離表示を見て「後半しっかり走れれば8時間切れそう」とか考える。

A3 せりあい地蔵エイド

エイド前から徐々にカウベルや応援の声が聞こえる。エイドスタッフや応援の人達が迎えてくれた。苦しくて涙腺が緩くなっているのか山の中で登ってくるランナーを待っていてくれることに涙が出そうになった。

根本中堂で補給したソフトフラスクの水分がほぼ減っていた。ドリンクを補充してコーラとグリーンDA・KA・RA あと持ってきてたジェルと固形のエナジーバーを食べた。

A3を出てからすぐ急な登りがあるのでペースは変えずまた淡々と登っていく。側にいたランナーが「何これ壁やん」とこぼしてた。その登りもそんなに長くないことは知っていたので特に動じず登る。 登り切ってからはやや下り基調のトレイルを進む。気持ち良く走れるところなのだろうけどあまり身体が動かない。途中幾つかのキツい登りがあったがそこは歩いて登った。

この頃からポツポツと雨が降り出した。空を見上げると木々の隙間から見える空は午前中の晴れ間が嘘のように曇って来ている。

「あぁやっぱり降り出したか。」

でもまだ全然小降りだ。これ以上雨が強くならなければいいな…。などと思いながら進んでいた。

滝寺の下り

仰木峠を越えてからのトレイルでは急な下りが続いた。特にこの滝寺の下りは正に激下りの坂でガイドのロープを使いながらでないと厳しいくらいの傾斜だった。否が応でも足を酷使する。前腿と膝がミシミシ悲鳴を挙げてるようだった。シューズの中で親指の爪が何度もシューズ先に当たり痛かった。トレイルの下りは苦手だがこの傾斜は他のランナーも上手く下れないようで追い抜かれることはなかった。ただ足に確実にダメージが蓄積されていくの分かった。それをどうしようもできないのが歯がゆかった。とにかく早くこの下りが終わってくれと念じてた。

激坂を下りきると舗装された林道に出た。やっとこれたと思ったけどビックリするくら足が固まってる。走りだそうとした瞬間、筋肉が一斉に目を覚ますように両足が痙攣を始めた。

「ヤバい」

頭の中で声がした。舗装路を走ろうとするけど足が上がらない。芍薬甘草湯を飲んで両足にマグネシウムオイルを塗った。ゆっくりと歩き出しては止まりとしてると痙攣も治まってきた。

ここは苦しくても走ろう。と思ってた区間だったけどとてもそれどころじゃなかった。かと言ってこの区間をこのままずっと歩いしてしまうとズルズルと遅くなっていく。確かめるように歩きながら頭の中で「1.2.3.4.…」数え20歩歩いたら「1.2.3.4.5」とゆっくり30歩走り出す。またゆっくり歩数数えながら歩きまた走る。を繰り返していた。

少しずつ走れるようになってきたけど傾斜が登り→フラット→下りと大きく変わる度、目覚める様に足の筋肉が痙攣した。

雨も本格的に降り出して来た。

WS 南給水所

ドリンクと水のみのエイド。ここでここから更に雨で体温下がると思ったのでウィンドシェルを羽織った。レインとも迷ったけどレインだと熱が籠もり過ぎて暑く感じるだろうと思ってウィンドシェルにした。足にマグネシウムオイルを塗り直しフラスクに水分を入れたらすぐに出発した。エイドの人と言葉を交わしたら足の痛みや疲労も軽減した気がした。足攣りも治まってたけど舗装路の下り坂だけど時計を見るとkm7〜8分とペースの表示が出て驚いた。足が固まって全然前に出てないんだろうか?後ろからくるランナーにも次々抜かれた。

A4 仰木エイド

WSで「次のエイド5km先!」と言われたけどそこまで離れてなかった気がする。エイドで立ち止まると寒さを感じた。エイドスタッフのおじさんから「兄ちゃんこれ食え!旨いから!」と果物入ったゼリーの様なものを勧められた。寒かったけどおにぎりとか胃が受け付ける気がしなかったのでゼリーを一つ口に入れると本当に美味しかった。思わず「ほんまや。めっちゃ旨い。」と声が出た。

おじさんが笑いながら「そうやろ?もっと食べ食べ」と言ってくれた。優しい声で涙が出そうだった。また一つゼリーを食べてジェルを食べて走りだした。

WS 元三大師ウォーターステーション

40km以降長い舗装路の下り。とにかく長く感じた。この下りを下りきったところに折返し地点がある。前日ホテルで見た鏑木さんのブリーフィングで言っていた。前から折返して来たランナーが坂を登ってくる。「ガンバっ」「ナイスラン」「ファイト」すれ違うときに声を掛けてくれるので自分もそうした。しかしいつまで下っても折返し地点が見えない。ジワジワ足にまた疲労が蓄積されているのを感じた。「早く登り返したい」。

やっとのことで折返し地点が見え、その先にエイドがあった。ジェルを摂りソフトフラスクを補充する。スタッフの方が「寒いの?大丈夫?」と声を掛けてくれた。たぶん相当顔に疲労が出てるのだろう。「残り8kmくらい!頑張って」優しい言葉が嬉しかった。

今まで下ってきた道を再び登り返す。今度は下りてくるランナーと言葉を交わす。皆苦しそうだった。

途中から下って来た道とは違う林道に入る。ここは登りも緩やかで歩きと走りを混ぜて進むこと出来た。途中から丸太の階段の登りが出ててきて一段一段が高い。土が削れてたりして階段というよりハードルみたいになってる。足置いてグッと身体を押し上げる度に足に痛みが走る。一段上がるのが本当にツラい。もう少しでエイドなのに全然登れない。この階段に苦しめられる。

A5 横川エイド

最後のエイドに着いた。

ガンバフンバ隊とガンバフンバ君がいた。

温かい味噌汁をもらった。お腹の中 内蔵が温められる感じがした。「うまい!」もう一杯おかわりをもらった。ここでもエイドスタッフの方が「寒い?大丈夫?」と声を掛けてくれた。「お白湯飲む?スポーツドリンクも待ってくれたら温かいの出来るよ?」。ここでもエイドスタッフの方の優しさが身体に染みる。

途中から時計を見ないようにして進んでた。見てしまって目標タイムより遅れていたら諦めてしまいそうだったから とりあえず行けるところまで全部出し切ってゴールしてからタイムは確認しようと思ってた。お味噌汁とエイドのゼリーとジェルを摂って軽く屈伸をした。ガンバフンバ君も「頑張って」と言葉を掛けてくれた。(ガンバフンバ君が喋ると思ってなくてビックリした)エイドのスタッフの方たちとガンバフンバ君にお礼を言ってエイドを出た。

ゴール 延暦寺

横川のエイドから約4キロ近くの下り坂。元気な時なら気持ち良く飛ばせる傾斜。だけど今はそんな余裕ない。最初の1kmくらいは快調と思ったけどとにかく長くて足のそこかしこが痛い。脹ら脛が途中何度も攣ってたけどお構い無しに「足前出せ!足前出せ!」と頭でつぶやきながら無理矢理地面に足をぶっ刺すつもりで止まらず走った。

もうちょっともうちょっと。

延暦寺に登るトレイル入口が見えた。最後の登りだ。後はここを登るだけ。

でももうビックリするくらい身体に力が残ってなかった。雨でトレイルがドロドロで何度も足を取られ滑った。雨も相変わらず降り続いてる。

唐突に腕時計がバイブレーションした。バッテリー切れ間近の合図だ。思わず腕時計に視線が移る。

時間 17:10

「あっ」

ここまでタイムを見ない見ないとしてたのに最後の手前でうっかり見てしまった。

目標の8時間切りはアウト。既に10分過ぎてるがトレイルの終わりも見えない。8時間22分の自己記録も更新は無理。そう悟った瞬間ズッシリとまた一段身体が重たくなった。

トレイルを登り切りゴール延暦寺に向かうロード。もう全身痛くて走れない。でも前だけ向いてとにかく前に進んだ。アスファルトの道がいつまでも続くようで長く感じた。後ろから登ってくるランナーが追い抜く時にポンッと背中を叩いてくれた。皆苦しいんだ。歯を食いしばって最後の力を振り絞った。

そしてやっと

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ゴール!

タイムは8時間35分。目標には全然届かなかった。

悔しい思いもあるけど厳しいレースだったのでゴール出来たことがただただ嬉しかった。

ゴール直後両足が攣ってしばらく動けなかった。

でも本当にいいレースだった。

コースはタフだったけど素晴らしかったしエイドスタッフはずっと優しかった。雨の中誘導してくれたスタッフはどこでも応援の声をかけてくれた。雨の中カウベルや声援で盛り上げてくれる人達もたくさんいた。

そんなたくさんの人達に背中を押してもらえた気がした。ただただ感謝の気持ちだった。

関西を代表するトレイルランニングレース 比叡山インターナショナルトレイル。思い出のレースになった。

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ここまで読んでいただきありがとうございます。

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