かぼちゃのトレイル日和

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【読むトレイルラン】ヴィーガン スコット・ジュレクのEAT&RUNで食べる事 走る事を考える 

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どうも かぼちゃです。

読むトレイルラン 

スコット・ジュレク著 EAT&RUN 100マイルを走る僕の旅 です。

 

 

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ヴィーガン スコット・ジュレクのEAT&RUNで食べる事 走る事を考える 

世界的の有名なウルトラマラソンランナーであり ヴィーガン(完全菜食主義者)である著者が自身の半生を振り返りながら 走ることの意味 食の重要性について語った本書。

日本でも昨今話題になっているヴィーガン。アスリートでありながら完全菜食であることの意味についても語られており トレイルランナーのみならず 広く様々な競技のアスリートにも通ずる内容なのではないかと思います。

 

登場人物

スコット・ジュレク 著者であり アメリカを代表するウルトラマラソンランナー。 

スコットの母 難病を患う著者の母。スコットの心の支え。

スコットの父 厳格な父。口癖は「とにかくやるんだ!」。長年この言葉がスコットの心に残る。

ダスティ・オルソン スコットの親友でランナー。著者をジャーカー(ジュレクと間抜けとを掛け合わせた言葉)と呼ぶが長年 様々なレースでスコットのペーサーを務める。

レア 著者の恋人で後に妻となる。菜食主義者で彼女との出会いが著者がヴィーガンとなるきっかけとなる。

 

はじまり

物語のはじまりは2005年バッドウォーター・ウルトラマラソン。

灼熱の死の谷(デスヴァレー)を217㎞もの距離を走る世界一過酷なウルトラマラソンで著者 スコットは嘔吐を繰り返しながら項垂れています。

夜でも気温40℃近いという過酷なレース環境で身体の限界に向き合いながら これまでの人生が著者の脳内をめぐります。

今までずっと走ってきた。どんな時も ずっと走ることを愛してきた。そしてどんな困難も克服してきた。

でも今回はもうダメだ。自分は何か足りなかったのだろうか?どこかで間違えてしまったのか…。

その時親友のダスティの声が聞こえます。

「いい加減立ちやがれ」

 

厳格な父と母の病

物語は1980年のミネソタに溯ります。

ミネソタ州プロクター。

著者は厳しい父と料理上手で優しい母の元に生まれ 幼少のころから 食べ物とのつながりの大切さを学びます。

父親はよく著者に仕事の手伝いをさせます。

遊び盛りの著者が不平を言うのを決して許さず「とにかくやるんだ」と厳しく怒鳴りつけるのでした。

しかし厳しいしつけの中にも思いやりと遊び心を盛り込んでくれる優しい父親でもありました。

 

しかし幸せは長くは続きませんでした。

母の身体の具合が悪い日が続きます。ある日とうとう一人で歩くのも難しい状態に…

病院で母に告げられたのは「多発性硬化症」という難病でした。

 

母の病気をきっかけに父はイライラとしていることが増え 機嫌が悪い日が続きます。

著者も母の代わりに家の手伝いが増えてきます。

 

父の仕事の手伝いで森に入り 木を伐り 薪を積み上げるたりとした作業の中 この静かな森の中のトレイルに自分の居場所になっていました。

 

スキーそしてダスティとの出会い 

ある日 父は中古のスキー道具を著者に買ってくれます。

それが次に著者の次の居場所を作ってくれるものになります。

 

高校二年生の時から著者はスキーに没頭します。

高校ではクロスカントリースキーのチームに所属し そのトレーニングの一環としてランニングを始めます。

チームのソレンセンコーチはトレーニングのこと フォームのこと レースでの位置取りなど様々な著者の疑問に熱心に答えてくれました。

著者のスキーチームは強く 著者本人もたくさんの個人賞を獲得していました。

ランニングで培った体力で気が付くとチームではトップの選手となっていましたが走ることはまだスキーのトレーニングの一つでした。

 

その後 クロスカントリースキーの各州上位成績選手が対象のスキーキャンプで著者は様々なトレーニングの知識を学びます。

とりわけ印象的だったのが食べ物に対することでした。

 

キャンプでは菜食中心の料理がこれでもかという程出されます。

生来野菜嫌いな著者でしたが選択の余地はなく 仕方なく出された野菜料理はすべて食べる様にしました。

すると身体に変化が起こります。今までのないくらい体調がよくなり 激しい練習のあとでも身体の調子はずっと良かったのです。

これが後に菜食中心の生活へと変わっていくきっかけとなります。

 

地元ではトップのスキー選手になっていた著者ですが 唯一勝てない相手がいました。その選手はスキーだけでなくランニング 水泳 自転車でも常にトップの選手でしたが その素行の悪さから不良というレッテルを貼られている男 ダスティ・オルソンでした。

後に長く多くのレースで著者を支える親友との出会いとなります。

 

高校生の卒業生代表に選ばれる程 周りからの信頼も厚くまじめな著者にとって破天荒で正反対のダスティはある意味で憧れの存在でした。

そしてダスティはその素行と口の悪さと裏腹にタフでストイックな一面もある優れた選手でした。

 

超長距離走への誘い

卒業後そんなダスティに誘われヴォイアジャー50マイルという長距離のランニング大会に誘われ 超長距離ランニングのトレーニングに取り組みます。

いつもダスティが先頭を走り 著者はその後ろについて走る。

ダスティは走りながら厳しい言葉と軽快なジョークで著者を鼓舞します。

著者もそれに応える様にハードなトレーニングをこなすのでした。

 

1994年ヴォイアジャー50マイル 親友に誘われて挑戦したこのランニング大会 

親友ダスティがトラブルで後退し 不安に駆られ著者も足を止めそうになりますが 直向きに前だけをみて走り抜き結果は2位でした。

 

菜食への目覚め

翌年二度目のヴォイアジャー。今度は優勝と意気込み挑戦するも またしても2位という結果に…。

これ以上速く走れない。と限界を感じます。

どうすればもっと速く走れることが出来るのだろう?

 

ヒントをくれたのは大学の理学療法のインターンの病院で出会った病気の老人でした。

病院で老人に提供されていた料理 

野菜が少ない偏った内容。

加工食品とでんぷんと砂糖だらけの食事。

患者の身体に気は使っていても 食事に関してはまったく関心を持っていなかったことに気付きます。

質の悪い食事は人を病気にする。その逆はどうだろう?

 

 

著者がヴィーガンとなるきっかけは後に妻となるレアとの出会いでした。

彼女は菜食主義で食材には拘りをもっていました。彼女と仲良くなり 彼女や友人がくれた本の影響で徐々に菜食について学ぶことになります。

 

より一層 食について勉強し アスリートとして菜食の利点 重要性を学び より良いものを食べて生活に気を配ることを決意します。

そして菜食を増やし肉を減らした生活を経て挑んだ三度目のヴォイアジャーで見事

優勝を勝ち取ることが出来たのです。

 

大学の卒業を経て ほぼ完全に菜食となった著者。

より長い距離をより速いスピードで走れるようになっており 疲労からの回復も早くなっていることを実感。

肉を食べなくなって植物性の食事を摂るようになったからだと実感します。

 

 

100mileレースへの挑戦

親友ダスティと共に初めて100mileレース エンゼルズ・クレスト100に挑戦。

初の100mileレースに苦戦しながらもダスティをペーサーとして2位でゴールします。

優勝こそは逃しましたが 著者は100mileというレースに確かな手応えを感じるのでした。

 

次なる挑戦の舞台として著者はウエスタンステーツ100というレースを目指します。

世界で最も知られたウルトラマラソンレース。

その100mileレースで勝利する為 トレーニングを積む日々。

そして迎えたウエスタンステーツ100。

周りは著者をルーキーとあざ笑います。ミネソタから来た平地野郎。

ここは山岳レースだぞ。と

 

レース序盤から周りがオーバーペースだとあざける声をよそに著者はトップで走ります。苦戦しながらも辛くも優勝を勝ち取ります。

 

痛みと向き合う

初のウエスタンステーツで優勝を成し遂げた著者はより勝利に向けて貪欲にトレーニングに打ち込み 食へのこだわりは増し 様々なレースで勝利をおさめます。

この頃には著者は完全なヴィーガンでした。

 

そして二度目のウエスタンステーツ100では親友ダスティと共に挑みます。

ダスティらしい叱咤激励のおかげで二度目のウエスタンステーツも優勝を飾ることが出来ます。

 

2度の優勝でも著者はさらにその先を求めます。

しかし 三度目のウエスタンステーツ 約70㎞地点で事件が起こります。

葉に隠れた石と石の間に足を突っ込んでしまい 靭帯を断裂。

残り91㎞もレースが残っている絶望的状況で著者は冷静に対処します。

痛みをそのまま受け入れ 状況を把握する。

そして焦りや苦しいという感情を捨て 今の状況を改善する方法を考える。

 

結果 驚くべきことに著者は残りの約90㎞を靭帯が断裂したままゴールを目指すことを決意します。

他の選手に怪我を悟られないように注意を払いながら…。

なんと三度目のウエスタンステーツさえ優勝してしまうのです。

 

後も著者は破竹の活躍を続け ウエスタンステーツ100を7度も優勝するという全人未踏の快挙を成し遂げるのです。

 

灼熱のウルトラマラソン 限界の先へ

 

そして物語は冒頭の2005年バッドウォーター・ウルトラマラソンへ。

最後のウエスタンステーツ100の優勝から2週間で著者はこの世界一過酷なウルトラマラソンに挑戦していたのでした。

ウエスタンステーツと比べるとなだらかなコースのこのレース。当然勝てるだろうと考えていた著者はその考えが甘かったことを思い知らされます。

猛烈なデスバレーの酷暑は著者を予想以上に苦しめるのです。

 

地面にうずくまり もうダメだと思ったその時 声を掛けたのはダスティでした。

「地面にうずくまったままじゃ勝てないぞ」

苦しい時にいつも厳しい言葉とジョークで前に進む力をくれるのはダスティでした。

ダスティの激励で最初は一歩一歩 歩くことから。

 

 奇跡的に復活を果たす著者。それは身体を限界まで追い込み続けた時に訪れる 所謂「ゾーン」や「悟り」だったと著者は語ります。

 

限界を超えた走りで苦しみながらもこのバッドウォーター・ウルトラマラソンを制するのでした。

 

母の死 離婚 親友との別れ 

その後もハードロック100  スパルタスロンと様々なレースで優勝を飾る著者。

 

しかし 物語は暗い影を落とし始めます。

2008年難病と闘う母の容態は悪くなっていました。

そして妻であるレアとは常に衝突し ついには離婚することになってしまいます。

 

母との死別。またライバルである友人のランナーの自殺や 故障によるレースの棄権等 著者にとっては辛い出来事が続きます。

親友ダスティも友人を亡くし著者に辛く当たることが増え 著者は親友への気遣いから距離を置こうとします。

 

そして著者は自問します。

自分はもう崖っぷちなのか なぜ走るのか 

 

自分のルーツに戻る

著者はふと足を止めることを考えることにします。

「とにかくやるんだ」 

父が幼少時に著者に言ったように ひたすら走ることを続けてきた人生。

勝つことにこだわり多くの栄冠を手にし 代わりに何を失くしてしまったのだろう。

 

友人と共に145㎞のグランドキャニオンを走って縦断する旅で 自分と向き合いながらその答えを見つけ出します。

 

まとめと感想

本書は完全菜食主義ヴィーガンについて菜食のメリットについて述べられていますが 決してそれを強く勧める内容ではないと感じました。

著者はアスリートとして自らのパフォーマンスを向上させる為 完全菜食主義ヴィーガンへと至ります。

それはアスリートとして日々厳しいトレーニングを課し より強くより健康に生きようと考えた抜いた答えでした。

 

しかし大切なのはゴールや答えを得る事ではなくて その過程でどれだけ真剣に考え取り組んだか?だと著者は言います。

 

菜食であれ肉食であれ 自分の身体は今何を必要とし 何を食べるべきなのか 今と自分にしっかりと向き合い 考えること。それは走ることも同じ。

 

食べることも走ることもシンプルなこと でもそれらにしっかりと気持ちを込め 気を配りながら真摯に取り組めがそれが大きな何かにつながる道になるのだといいます。

 

本書を読んで どこまでも誠実でストイックでそして紳士的 著者にそんな印象を覚えました。

余談ですが本書にはたくさんの著者の菜食料理の写真とレシピが添えられています。

そうしたレシピを元に著者の菜食料理に触れてみるのも良いのではないでしょうか?

 

ウルトラランナー スコット・ジュレクの魅力が詰まった

EAT&RUN 100マイルを走る僕の旅 

ぜひ読んでみてください。 

 

 

kabocha-8.hatenablog.com

 

 

 

 

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