かぼちゃのトレイル日和

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【読書感文】現役アイドルが紡ぐ物語 トラペジウム 高山一美 感想

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最近のアイドルのマルチな活躍には舌を巻く。

正直あまりテレビは見ない方というのもあるが… 

 

お笑い芸人顔負けに身体を張り 演技はテレビだけでなく映画や演劇など幅広く

バラエティー番組の司会 果ては麻雀の実況などもこなしていたりする。

 

乃木坂46というアイドルグループを知ったのはここ最近の事だ。

ここ最近知ったというのは正確ではない。名前は聞いたことがある数多のアイドルグループの一つ という認識しかなかった。

 

 なのでアイドルグループにそれまで興味もなかった(肯定も否定もしない)がたまたま手に取った文庫本がアイドルグループ 乃木坂46の現役メンバーが書いた物と知って驚いた。

 

文庫本化されたということはそれなりの評価と売り上げがあってのことだろう と思ったのだ。そんなこと出来るのか。

 

同じ様なアイドルグループのアイドルタレントが引退後の俳優業やモデル業などで活躍する様は良く見るが アイドル活動の傍らで執筆したものが書籍化し(もちろん番組等の企画でちょっとした物を書いて発売というのもあるにはあるのだろうが)文庫化まで結びつくとは 並々ならぬ期待感が膨らむ。

 

聞けば著者の高山一美氏はアイドル業の傍らで雑誌ダ・ヴィンチで連載を持ち、その時連載していたのがこの「トラペジウム」(意味は四重星 4つの接近し合う恒星の意)

非常に瑞々しいが良いタイトルと感じた。

 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41AszhxU8jL._SX353_BO1,204,203,200_.jpg

 

極力ネタバレを挟まない様に書いていきたいと思う。

 

主な登場人物は4人の女子高生

 

■東(あずま)

主人公 城州東高校に通うアイドルになることを目標とする

 

 ■大河くるみ

西テクノ高専に通うロボット好き

 

■華鳥蘭子

聖南テネタリス女学院のお嬢様

 

■亀井美嘉

城州北高校に通う ボランティア活動に参加したりと献身的な一面をもつ

 

ストーリーはアイドルになることを目標とする主人公 東が 西 南 北のそれぞれの高校から仲間を募り 目標実現のために 時に積極的に したたかに邁進していく姿を描く。というもの

物語の序盤は仲間集めから始まり 若干のフィクションも感じながらも徐々に見えてくる主人公の直向きさにつられていく…

 

他の3人の登場人物のキャラクターも立っている。(実際はもう一人キーとなる人物がいるのだが…)

 

文章の軽妙さとストーリーの分かりやすさが読んでいて心地よい。

青春の眩しさに彩られながらも 時々ピリッとした文章表現がアクセントになっていて終盤は広がった風呂敷も綺麗に包まれていく。

 

おや?と思える表現もあったりするのだが それもリズムか

個人的に気になったは関西出身のキャラクターが出てくるが その関西弁の表現はもう少しアドバイスする編集者はいなかったのだろうか?それも著者の文章のリズム感を尊重したのだろうか。

正直もう少しキャラクターやエピソードを深堀すれば 余韻の不快作品に仕上がったのではとも思う。

しかしながら現役アイドルが(というのは失礼かもしれないが)その処女作として書き上げた作品としての完成度として十分なのではないだろうか?

 

夢を追う

というのはありきたりなテーマであるが この作品の特徴となっているのは少年漫画のような単純に夢を追うために 努力 友情 ハッピーエンドではなく

夢 目標を達成する為に何が必要か?不必要か?

ガムシャラではなく計画的に少しずつ狡猾に しかし直向きに主人公が考え行動していく姿にあると思う。

それが決して上手くいくことばかりではなく 数奇な運命で前進しても一つの事柄で瓦解していくリアルも含め アイドルというより 今 夢 目標を追う若者の生の姿なのかなと感じた。

 

物語は終盤 本当に美しく締められる。

 

現役アイドルとして多方面で活躍しつつも 今のステージに立つまでに様々な苦渋を経験してきた著者だからこその作品なのかもしれない。

著者のこれからの成長と作品を期待させる処女作と言えるのではないだろうか?

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